在宅ひとり死のススメ (文春新書) [ 上野 千鶴子 ] 価格:880円(税込、送料無料) (2021/5/22時点)楽天で購入 |
見た瞬間の感想は、
そう、いまの賃貸業界では推奨はできない。賃貸業界で働いているから瞬時にそう思ってしまったのです。
上野先生は、「おひとりさまの老後」を2007年に出版され、もう13年。この「おひとりさま」シリーズも様々展開されて、三部作になりました。その最新巻がこの「在宅ひとり死のススメ」です。
第1章:「おひとりさま」で悪いか?
第2章:死へのタブーがなくなった
第3章:施設はもういらない!
第4章:「孤独死」なんて怖くない
第5章:認知症になったら?
第6章:認知症になってよい社会へ
第7章:市の自己決定は可能か?
第8章:介護保険が危ない!
私がまず読み始めたのは、第6章:認知症になってよい社会へ、でした。
それぞれの心配には、
①孤独死→事故物件とされる可能性あり、遺品撤去、賃貸借賢の相続
②認知症発症→異常行動による近隣からの苦情、孤独死
③滞納→家賃を下げるために転居を希望するも次の物件が見つからない、滞納がかさみ、強制執行もできず……
1つの問題からいろいろと発展し、大家さんも困ってしまうこともあります。
だから高齢者への賃貸物件の貸し出しがなかなか進まない、という現状ではありますが、それぞれの問題に解決の糸口も、対処方法も、保険なんかも対応するようになってきました。ですが、なかなか亀の歩みで劇的な進歩がありません。
この賃貸状況下での「在宅ひとり死のススメ」という上野先生からの提示。
人間・動物である以上、”死”というモノを避けては通れません。いまのところ100%訪れます。その中で、高齢者の5人に1人が認知症になるという時代が来るのです、結構もうすぐ。2025年、4年後と言われています。
ほしいのは認知症を怖がる社会ではなく、
同著 P140 4行目&6行目
認知症になっても安心して生きていける社会。
「安心して認知症になれる社会」
これがすごく大事だと思います。この後に上野先生も書いておられるのですが、
認知症になっても安心して生きていける社会、そこに賃貸物件に住む人はどれくらい居るでしょう。現状のままだと、なかなか少数派かもしれません。
第8章で介護保険についての上野先生の主張のなかで、これは今の高齢者の問題・介護をしている人たちだけの問題ではない、とおっしゃってくれています。
私もまさにそう思っていて、これ今34歳のワタシにも大きな問題です。今の介護保険の使われ方、運用の仕方が30年後の介護保険にも何かしらの影響は与えられます。介護保険をまだ支払っていない年代でも、いずれは使う可能性のある保険です。
同様に、30年後に賃貸で物件が普通に借りれる、安心して認知症になったとしても賃貸に住み続けることができるようにするには、今から動かないと間に合わないかもしれません。
34歳の私がが30年後のことを身近に考えるのは難しいのではないかと言われますが、今介護業界でも20代30代が真剣にいろいろと頑張ってくれています。私よりもずっと若い子達が、どうやって変えていこうかと一生懸命試行錯誤しながら考えてくれています。
宅地建物取引士・賃貸住宅経営管理士と社会福祉士を持っている私ができること、不動産業界と福祉業界の橋渡しをすること、架け橋になること。
この「在宅ひとり死のススメ」を読んで、ますます住まい・住教育のことからも在宅ひとり死について考えていきたいと思いました。
ぜひ、福祉の方に限らず、不動産関係者の方にも手にとっていただきたい1冊です。